2010年6月12日土曜日

危機一髪3

人は高きにおればこそ、なんとか全体を見わたせる。
ところが、人がいったん低きに落ちてしまったら 
自分がどこにいるのか、ここがどこであるのかさえ 
分からなくなる。その時人は必ず パニックに陥り 
まずは心理面から参(まいっ)てしまうのだ。
だから 沢には絶対に下りてはならない。

ここで私はあることに思い至ったのです、
「そうだ、昔 登ったあの別コースの道を捜して見よう。
その道さえ見つかれば、確実に戻れるはず」と 
時間だけが無情にもドンドン過ぎ去る中、
何と私は再び 天王山の頂上を目指したのです。

ところがです、その道がどこであるのか、
かいもく 見当もつきません。
それもそのはず、私のように 
地図にも載っていないこの天王山に登山に来る人など 
5年に一人もいないに決まっているのです。
樹木が年々生長し、草が生い茂るこの季節
当時もうっかりすると見失っていまうあの小さな道が 
今やすやすと見つかるはずがない。

ここにも すぐ目の前に
別の沢が広がり落ち、まるで手招きでもするよう。
木々の葉の間からは 近くに見える
下の光景から判断すると あの方面の向こうには 
確実にわが小屋があるはず。
「日が暮れる、もう時間との勝負、
思い切ってこの沢を降りてしまおうか。」

「主よ、どうするべきですか!」 

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